Column
空気と換気のコラム

安達 修一 先生

5.PM2.5等の大気汚染から身を守るために

2017/06/29

※音声が出ます。
 
 海外のニュースを見ると世界保健機関(WHO)の研究機関IARCが「大気汚染とガン」という機関誌の表紙に、大気が汚染された街中を大きなマスクをして自転車に乗る人の写真があります。外出の時はマスクが効果的ですが、マスクをして一日生活するわけにもいかないですし、実は家の中で生活している時間が長いのです。ですから家の中で吸っている空気がどういう空気なのかが、意外に大きいのかなと思います。
 
 家庭の中でも発生源はあります。シックハウスと言われて随分経ちますが、家の構造の気密性が高くなり、いろんな建材や防虫剤等から出る有害物質の濃度が家の中で高くなります。今の防虫剤は臭いませんが、揮散して部屋の中に溜まります。そのような空気は空気清浄機では取りきれませんが、きれいな外気を取り入れるには越したことはないと思います。いわゆる換気が一番おすすめです。
 
 もし外気の中の粒子状物質を取り除いて家の中に取り込められれば、それは効果的な対応になるかと思います。小さな粒子状物質を自分で感じることができればいいですが見えませんし、専門的な測定器はありますが家庭向きではありません。外気を何らかの方法で清浄して家の中に取り込めば、空気として安心です。家の気密性が高いといろんな問題が出てくるということです。
 
 「浄水器」もそうですが、汚れを除いています。定期的に濾材を交換しなければいけないのと同じで、空気も除去した汚れが溜まっていくとすれば、ある程度一定間隔で取り換えないと、また別の問題が出てきますね。
 
 大気汚染の健康被害において、一番有名な事例はロンドン事件がありますが、今と比べものにならない程ひどい大気汚染でした。その時は大気汚染で亡くなったとは誰も思いませんでしたが、数千人超が死亡しました。基本的には疾患が悪化して亡くなっています。その統計を取り例年の死亡率と比べると、大気汚染のある日が極端に高くなり、因果関係も見つかりました。今でもそのようなことが起こるかもしれません。

 今のPM2.5の環境基準を制定する基になったのは、過去の死亡率等様々な調査データを指標で見た時に、汚染が高い時には死亡率が上がる、病院に来る人が増えるというデータを基にして決めているので明らかです。
 
 そのようなことで国でも環境基準を作らなければならないということで、天気予報や新聞で毎日皆さんの目に触れるように「今日のPM2.5は何何です。」と日常的に言われるようになりました。ですからPM2.5を吸い込んだからと言って急に病気になるということはありませんが、やはり風邪をひいて調子の悪い時もあるでしょうし、ちょっと喘息の方が居られたり、高齢になったりすると呼吸器もだんだん弱ってくる。そういう中で疾患が悪化しては困りますよね。その目安としてPM2.5は35、70mg/m3を目安として外出をしない、あるいは活動を控えるということを国では求めています。マスクをするのは一つの手段ですけれども、生活の中で自衛する手段を意識して、病気が悪くならないようにしましょう。

(つづく)
 


■講師ご紹介

安達先生

相模女子大学 栄養科学部長 教授

安達 修一 先生

専門分野は環境保健学。医学博士。埼玉医科大学医学部助手、講師、助教授を経て平成13年4月より現職。日本衛生学会、大気環境学会、日本癌学会等、多数の学会へ所属。環境省 微小粒子状物質環境基準の制定に携わる。
 
 

■安達修一先生コラム一覧

1.大気汚染はいつどこで起こるの?

2.PM2.5は呼吸で体に侵入する

3.PM2.5による健康影響

4.PM2.5の影響を受けやすい人とは?

5.PM2.5等の大気汚染から身を守るために

6.健康に暮らすための空気の重要性

 

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