Column
空気と換気のコラム

安達 修一 先生

3.PM2.5による健康影響

2017/05/11

※音声が出ます。
 
 PM2.5は肺の奥まで侵入し、運よくマクロファージに食べられてしまう場合もあるのですが、血管へ入ると体の仕組みに関与して炎症を起こすきっかけになります。粒子がある刺激を与えて、それが炎症を引き起こしたり、血管を収縮させ、詰まりかけのところに炎症があると、細胞を集めてさらに血管を詰まらせ、動脈硬化や心筋梗塞を引き起こすことがあります。
 
 PM2.5は目に見えません。「今日は0です」と言えればいいのですが、低くても10や20μg/m3などが続く日もあります。20μg/m3なら1日の呼吸量2万リットル呼吸すれば1日0.4mg、それが365日、何十年と吸い続ければ・・・もちろん全てが体に入るわけではありませんが、一旦は取り入れていることになります。肺は一方通行の道ではなくて、袋状のため、少しずつ汚れが溜まっていってしまいます。肺の中を見る機会はなかなかありませんが、年齢と共に肺の汚染度が上がっていき、特にタバコを吸っている人は肺の網目状の肺胞等が壊れ、スカスカなスポンジのような状態になります。いわゆるCOPD(慢性閉塞性呼吸器疾患)の在宅酸素療法のように鼻から酸素を補給してあげないと呼吸が機能しなくなります。
 
 肺の中というのはその人の生きてきた環境を反映しています。それは大気汚染だけの要因とは限りませんが、いろんな仕事、生活によって反映します。かつて50年と言われた人生が現代は70、80と長生きになっています。良い空気環境で生活してきた人と、悪い空気環境の中で生活してきた人で差が出てくるのも仕方がないことです。
 
 どういう生活をすればPM2.5を吸い込む量が多くなるか少なるかと言うのは個人差があるので難しいですが、肺をきれいにする機能は年齢と共に下がります。呼吸機能は運動能力と関係し、年齢と共に衰えていきます。日本人の死因の第三位が肺炎です。それはやはり感染症やその他理由があるのですが、背景には呼吸器自体の感受性の違いが年齢と共に出てきていることが挙げられます。
 
(つづく)
 


■講師ご紹介

安達先生

相模女子大学 栄養科学部長 教授

安達 修一 先生

専門分野は環境保健学。医学博士。埼玉医科大学医学部助手、講師、助教授を経て平成13年4月より現職。日本衛生学会、大気環境学会、日本癌学会等、多数の学会へ所属。環境省 微小粒子状物質環境基準の制定に携わる。
 
 

■安達修一先生コラム一覧

1.大気汚染はいつどこで起こるの?

2.PM2.5は呼吸で体に侵入する

3.PM2.5による健康影響

4.PM2.5の影響を受けやすい人とは?

5.PM2.5等の大気汚染から身を守るために

6.健康に暮らすための空気の重要性

 

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