Column
空気と換気のコラム
坂本 弘志 先生
5.第3種換気で知っておきたいことは
2016/04/07
はじめに
第3種換気は、設置・施工の簡便性、メンテナンス頻度の低さ、安いイニシャルコストおよびランニングコスト、トラブルの発生頻度の少なさ等の多くの利点を持っています。最近の北海道住宅新聞のアンケート調査では、第3種換気の採用実績は全体の59%で、第1種の31%を大きく引き離し、換気設備の主役の座を保持しています。しかしながら、第3種換気が2020年から義務化される新省エネ基準に対応し、今後とも生き延びて行く上で、排気に伴う熱を如何にして回収するかは、避けて通れない課題となります。さらに第3種換気に関して、設定された換気量を何故変えてはいけないのか、施工の簡便化を図る上での排気ダクトを簡素化出来ないのか、ダクトレス局所換気では何が問題なのか等の疑問をユーザーが持っているのも事実です。このようなユーザーの疑問に真摯に対応して行かなければ、今後の第3種換気の需要は覚束ないものとなります。そのためには、先ずは第3種換気ならではの特性と、抱える問題を熟知しておかなければなりません。それによって初めて、ユーザーの満足を得るものを供給出来る事になります。このようなことから、本コラムは、「第3種換気で知っておきたいことは」と題して取り上げて見ました。
これから第3種換気に求められることは
第3種換気で、これから求められることは何かを纏めて見ました。
【その1】
排気熱の回収方法の確立です。これまでも第3種換気での排気熱の回収に関しては、強い関心が持たれ、そして幾つかの方法が提案されて来ました。その中の代表的なものとして、①排気熱をヒートポンプの熱源として活用する方法、②熱交換装置を用いて排気熱を回収する方法、③蓄熱体を用いて排気熱を回収する方法,④排気熱を融雪等の熱源として使用する方法等が有ります。しかしながら、これら何れの方法も一長一短があり、残念ながら、広く普及するまでには至っていません。ただこの中で、蓄熱体、あるいは熱交換装置による熱回収は注目すべきもので、今後これらの低価格・高性能のなる製品の開発が強く望まれます。
【その2】
排気ダクト配管の簡素化です。第3種のダクトレス換気ファン、いわゆるパイプファンが未だに多く用いられているのは、「価格の安さと施工の簡便性」からです。ダクト式第3種換気が今後とも採用され続けられて行くためには、排気ダクトの配管を出来る限り簡素化し、イニシャルコストを下げ、施工の簡便化を図ることです。
【その3】
外気の汚染物質の浸入防止法の確立です。第3種換気においても当然、外気中の汚染物質の室内への侵入を防止する事が求められます。とくに、PM2.5・火山灰・花粉等の微細な粒子が多い地域では、汚染物質の室内の浸入防止は避けて通れない課題です。現在汚染物質の防止は給気口にフィルターを取り付けることで行っていますが、PM2.5のような微細粒子の捕獲に対しては、どの程度の効果を有するかはあまり定かではありません。今のところ有望視される方法は、外気の取り入れ口を一本化し、外気清浄機の導入することであると考えます。
【その4】
メンテナンス作業を容易に出来るようにすることです。そのために、換気設備の天井裏の取り付けは避けたいものです。第1種換気に比べてメンテナンスの必要性は遙かに低いが、それでもファンの清掃を主体とした年1回程度のメンテナンスは必要です。メンテナンスを容易にする1Fや2Fの壁面や床下に換気設備の本体を設置すべきであると考えます。
【その5】
換気設備の施工後の換気量の検証です。 これまでにも換気量の不足で、シックハウス症候群の発生事例が多々ありました。排気ダクトの施工ミス等で設計換気量が得られていないこともしばしばあります。換気量の測定は極めて簡単です。是非とも施工者に義務付けをしたいものです。確認申請時の換気量は、あくまでも机上での値であり、実測値では有りません。
外壁通気層からの給気の是非は
外壁通気層からの給気は、外壁の景観の改善、風圧力の緩和、あるいは換気部材の取り付けによる外壁の劣化防止等の面から、推奨すべき一つの方法で、早くから提案されていました。当初は、住宅の気密レベルが低い為に、2階の給気口が排気口として働き、その結果冬季では外壁材にしばしば凍害が発生し、問題視されて来ました。しかし最近では、住宅の気密レベルの向上に伴って、2階の給気口が排気口となるようなこともほぼなくなり、室内給気を外壁通気層から取る方法が増えつつあります。ここで外壁通気層から給気を行う場合には、どのような注意が求められるかを纏めて見ました。
(1) 住宅の気密レベルが2.0m²/m²を超える住宅では、外壁通気層に取り付けられた2階の給気口は、排気口となる危険性が生じます。その結果、寒冷地での冬季では、外壁に結露障害を引き起こすことから、給気口を外壁通気層に設けることを避けなければならなりません。
(2) 通気層に設ける給気口の取り付けは、換気ファンやレンジファンの排気口を有する外壁面を極力避けるものとします。やむ得なく換気ファンやレンジファンの排気口を有する外壁面に取り付けなければならない場合には、換気ファンやレンジファンの排気口から、少なくとも2~3m程度離して給気口を取り付ける必要が有ります。
(3) 外壁通気層の本来の機能である、壁体内の湿気を排出すれ上では、外壁通気層の厚さは、12mm以上あれば良いとされています。しかし外壁通気層から室内給気を取る場合には、給気量を間違いなく確保する上で、外壁通気層の厚さは18mm以上とする必要があります。図1は必要換気流量が150m³/hで、かつ気密レベルが0.5cm²/m²なる住宅での厚さ18mmの外壁通気層からの給気流量の実測結果を示したものです。給気流量は20m³/hとなっており、間違いなく確保出来ていることが分かります。ただ、給気口からの流量は、住宅の気密レベルに密接に関連します。必要給気量を給気口で確保するには、住宅の気密レベルは、少なくとも1.0cm²/m²以下とすることが必要とされます。気密レベルが1.0cm²/m²を超える住宅では、通気層に取り付けた給気口から給気量は、あまり期待出来ないものとなります。
図1 外壁通気層からの給気流量の実測例
気密レベルが1cm²/m²でも給気の半分は隙間から
排気型第3種換気においては、室内は必ず負圧となります。その結果、この負圧によって、外部の新鮮空気は、給気口を通して室内に給気されることになります。この時の給気口からの流量は、住宅の気密レベルと密接に関係します。図2は、第3種換気を稼動させた時の住宅の気密レベルと給気口からの給気量を示したものです。図に示すように、気密レベルが0.5cm²/m²では、給気口からの給気量は全体の70%程度、気密レベルが1.0cm²/m²では、給気口からの給気割合は50%となっています。いずれも室内への残りの給気量は、住宅の隙間から供給されることになります。したがって、気密レベルが0.5cm²/m²の住宅において、必要換気量150m³/hを得る上で、5個の給気口によって行うものとすると、給気口一個当たりの平均給気量は、30×0.7≒21m³/hとなります。そして他の残りの給気される量は、建物の隙間から流入されることになります。またこのような給気口一個当たりの給気量は21m³/hは、上述した気密レベルが0.5cm²/m²の住宅での測定値20m³/hとほぼ一致したものとなっており、図2に示す結果を良く立証しています。
図2 住宅の気密性能と給気口からの給気量(BISのテキストから引用)
各居室に給気口と排気口を設けなければならないのか
第3種のダクト式換気では、基本的に各居室には給気口と排気口を設けるもとしています。確認申請時においても、このことを基本として審査しているようです。気密レベルが低い住宅では、換気経路が曖昧であることから、室内に換気されない滞留域が生じ、スムーズな換気が往々にして行われません。これを避ける上で各居室には給気口と排気口を設ける事が必要となります。一方住宅の気密レベルが高くなると、各居室に必ずしも給気口と排気口を設ける必要はなくなります。各居室に取り付けられた給気口からの空気は、アンダーカットされたドア等を通して、他の場所にある排気口を通して排出されます。気密レベルが0.5cm²/m²以下となる気密レベルの高い住宅では、排気口はトイレ、ユーティリティ、廊下等を主体に取り付けても、換気はスムーズに行われます。排気ダクトの簡素化は、部材と施工コストの削減を生み出し、換気設備の低価格を実現出来る事になります。住宅の気密レベルを高めることは、換気設備の簡素化と計画換気を実現する上での基本となるのです。このような事から、第3種換気においても、住宅の気密レベルは0.5cm²/m²以下としたいものです。
換気回数0.5回/hは必要不可欠か
国土交通省等が編集した「建築物のシックハウス対策マニュアル」では機械換気設備の能力としては0.5回/hに相当する換気量を確保した上で、冬季において気密レベルが2cm²/m²以下の住宅の場合には0.4回/h、2cm²/m²超える住宅では0.3回/hに相当する機械換気量まで低減可能な風量調整スイッチを0.5回/h運転用スイッチに加えることも出来るとしています。知っての通り、換気回数の0.5回/hは室内の炭酸ガスの濃度に基づいて定められたものです。そのために少人数の家族構成では、換気量が過大となります。居住する人数で換気量を調整すべきと考えます。また室内のVOCの濃度は、これまでの多くの測定事例から竣工後4~6ヵ月で大部分が放散される事が分かって来ています。さらには例え竣工時でのVOCの濃度がかなり規制値をオーバーしても、4~6ヵ月でほぼ規制値をクリアするレベルまで下がることが分かって来ています。これらのことから、以下に示す理由から竣工1年を過ぎた段階で、冬季間での換気回数を0.3回/h程度まで下げることを奨めたいものです。
(1)住宅のエネルギーの消費量の削減を図る上での一つの有効な手段となる。
(2)室内のVOCに関しても測定デから問題がないことが立証されている。
(3)給気による冷気感と、室内の過乾燥を緩和出来る。
(4)室内結露の発生は、これなでの測定データでは、殆ど皆無である。
換気量の調整はユーザーに任せる
多くのビルダーは、入居時に設定した換気量を変えないようにユーザーに申し伝えます。ユーザーは、その根拠があまり分からないままで遵守しています。設定された換気量は本当に変えてはいけないのでしょうか。換気による熱損失、室内の過乾燥、居住者数等に対応する形で、換気量の調整は当然ながら必要です。換気量の調整の必要性をユーザーに理解して頂き、時と場合に応じた調整を任せることが大切です。もしも換気量を調整することで、窓や壁の表面結露の発生、抜けきれない生活臭、新鮮さがあまり感じない室内の空気質等の問題が生じた場合には、居住者の判断で換気量の調整を臨機応変に行えば良いのです。換気量を自由に調整するには、無段階のコントローラを有する換気設備が基本となります。また換気量の調整は、実測された換気回数は0.5回/hを確保されていることが大前提です。このことからも、施工後の換気量の検証は必要不可欠なのです。
ダクト配管で注意すべきことは
【その1】
表1は、直管ダクトに対する曲がりダクトの圧損の割合を示したものです。曲がりダクトの圧損は、曲がり角度の増加と共に大きくなることから、45°の曲がり部は4~5ヶ所、90°の曲がり部は3ヶ所程度とし、90°を超えと曲がり部は極力避けるようになければなりません。
表1 直管ダクトに対する曲がりダクトの圧損の割合
【その2】
ダクトが潰れた場合での圧損は、表2に示すように直管ダクトに比べ極めて大きくなります。例えば流路面積が高々30%減少しても、生じる圧損は直管ダクトの12.7倍となります。ダクトの潰れは極めて大きな圧損を生み出します。狭い空間スペースに施工すること等で生じるダクトの潰れは、極力避けなければなりません。
表2 直管ダクトに対する潰れダクトの圧損の割合
【その3】
表3はダクトの径の違いによる圧損比を示したものです。ダクトを配管するスペースが取れないこと等で径50mmダクトを用いることがしばしばあります。この場合の圧損抵抗が極めて大きくなり、換気量の確保は困難となります。
表3 ダクトの径の違いによる圧損 ([注]流量30m³/h、ダクト長さ10mでの圧損)
パイプファンでは何が問題なのか
第3種ダクトレス換気設備、いわゆるパイプファンによる換気は、価格の安さと施工の簡便性から多く採用されています。気密レベルが低い住宅での換気は、施工されたパイプファンと、風力と温度差による自然換気の二つで行われます。そのためにパイプファンそのものでの換気量が少なくても、不足分は自然換気で補われています。そのために気密レベルが低い住宅では、パイプファンによる換気で特段に問題とはなっていせん。しかしながら今後、省エネ化を図る上で、住宅の高気密化は一段と促進されて行くものと思います(新省エネ基準では、2030年までに目標としていますZEHでの気密レベルは、0.2~0.3cm²/m²以下としています)。このような高い気密レベルの住宅では、パイプファンのような能力の低い換気設備では到底対応出来なくなると考えます。またこれまで述べて来たように、第3種換気での最大の課題は排気熱の回収です。残念ながらパイプファンでは、排気熱を回収する方法を確立することは極めて難題です。この二つの問題だけからでも、今後何らかの対応を施さないと、パイプファンは自然と淘汰されて行くのではないかと考えられます。
おわりに
今回は、「第3種換気で知っておきたいことは」と題して纏めて見ました。第3種換気は、現在換気設備の主役となっています。今後とも換気設備の主役であるには、現在第3種換気が抱えている課題を解決していかなければなりません。本コラムが、幾分なりとその解決に役立つことが出来れば幸いです。
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