Column
空気と換気のコラム
南 雄三 先生
6.換気はメンテが命
2015/02/26
換気装置を取り付けても、電気代惜しさに停めてしまえば意味がありません。でも電力を使わないだけましかもしれません。ちゃんと運転されているのに、フィルターが埃や虫の死骸で目詰まりして、まるで換気していないことだってあるからです。
仕事もしないで、電気代だけが請求される。これほど損なことはありません・・などとお金の心配をしている場合ではありません。換気が停まれば空気が汚れ、それが原因で病気になれば愚かしく、医療費の負担だって追い掛けてきます。
正常なのは1割
東北大学・吉野博名誉教授によれば、東北地方を中心に戸建住宅25戸の換気システムのメンテナンスに関する調査(2005-2006)を実施。その中のシックハウス法制定後に建設された18戸(熱交換換気15戸、3種3戸)で風量測定を行いました。その結果、換気回数が0.5回/時を満たしている住宅はたったの2戸(11%)に過ぎなかったといいます。
これらの家は高気密を意識した家で、換気にも関心があったと思われますが、驚くべき結果でした。これらはフィルターの汚れが原因で、清掃した後に再度測定してみると、風量が増加した住宅は11戸ありました。最も汚れのひどかった家は清掃前が0.1回/時で清掃後に0.45回/時に復活したといいます。
また、北海道科学大学・福島明教授によれば、北海道内の高性能住宅で熱交換換気を搭載した16軒の家を調査したところ、強運転で換気回数0.4回/時を越えた家は、ここでもわずか2棟(13%)だけだったといいます。
居住者に負担のフィルター掃除
フィルターの清掃は難しいことは何もないけれど、ただ面倒だからとやり過ごしてきたことが原因。東北の例では、メンテナンスの必要性は理解し(64%の人が)、取り扱い説明書も読み(56%)、清掃したことはある(80%)にも係わらず、スパンが年を重ねる毎に長くなってしまうのでしょう。
欧州では換気装置を地下室に置くケースが多く、装置は大型にすることができます。なのでメンテナンスが容易ですが(写1)、日本ではコンパクトな装置を天井裏に隠すことが建築の美学として進められるので、余計に居住者に負担を掛けてしまいます。
写1 スイスの高性能住宅の地下室に置かれた熱交換換気装置
noフィルター+定期メンテ
また、日本の家に全般換気が導入されてから30年ほどが経過して、装置自体の寿命が問われる頃となりました。換気装置は金額が張る物でもなく、単純な装置なので調整も不要で、フィルターの清掃は居住者に託されているので、これまでメーカーサイドとしてのメンテナンス対応は希薄でした。でも、装置自体が交換の時を迎えて、他の設備機器と同じように、換気メーカーにも訪問対応が求められることとなりました。
居住者によるフィルターの定期的な清掃は可能なのか?
居住者にメンテナンスを強要することでメーカーは責任を回避してよいのか?
ベストを求めるのなら、●フィルターのない装置をつくり、●メーカーが定期的にメンテナンスすること。外の空気が汚れている状況になれば尚更、この2つの要求は高まるものとなります。
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