Column
空気と換気のコラム
南 雄三 先生
3.計画換気の原則
2015/01/07
局所換気と全体換気
換気というと、トイレや浴室にある換気扇(写真1)や台所にあるレンジフード(写真2)が思い浮かぶことでしょう。ではトイレや浴室にある換気扇の風量はどれほどか?と質問したら答えられるでしょうか。一般的には一つ50m³/時程度です。一戸建てだとトイレが2箇所だから合計100m³、浴室の50m³を足すと、150m³/時程度になります。
写1 住宅の換気口
写2 住宅のレンジフード
レンジフードには弱・中・強の三つのモードがありますが、大雑把にいえば弱で300m³/時、中で450m³/時、強で600m³/時くらいと、かなり大きな風量です。なので運転すると冷気を大量に引き込むので、高気密住宅では給排気型のものを採用します。
これらの換気はトイレなら用を足す時にだけ運転するもので、これを局所換気と呼びます。一方、家全体を換気することを全体換気と呼び、一般に計画換気という時には全体換気を指します。もちろん局所換気が全体換気に加わることもあります(写真3)。
写3 スイス高断熱・高気密住宅の熱交換器
計画換気の原則
計画換気の原則は「常に、出入り口を明確にし、必要な量の換気をすること」です(図1)。
●常時
局所換気と違い、全体換気では24時間運転が原則です。外国製には強弱のスイッチはあっても、ON、OFFはできないものもあります。
●出入り口の明確
寝室などのクリーンゾーンから新鮮空気を給気し(入口)、トイレや浴室などのダーティゾーンから排気する(出口)こと。これが逆になると、家中の汚れをのせた空気が寝室経由で出て行くことになります。30年も前はこれを「逆流」と呼んで、阻止しようと意気込んだものですが、今は自然換気という選択肢ができて、ここでは逆流を問題にしません。
●必要な量の換気
「必要な量」の目安は、日本では「0.5回/時」とされ、世界的にもこの程度が基準になっています。これ以上換気すれば熱損失になり、不足すれば空気汚染になります。でも今では「人が不在の時はもっと少なくてよいのでは?」という発想から、デマンド換気(湿度センサーで給排気量を調整)が注目を集めています。
0.5回/時といえば、床面積130㎡、天井高2.4mの場合、130×2.4×0.5回/時で約150m³/時となります。トイレ2つ+浴室1つの局所換気で丁度よいことになります。この3つを連続運転すれば全体換気になります。
図1 計画換気の原則
気密とは穴を開けること
さて、出入り口を明確にするために必要なことは何でしょう。ズバリ「高い気密性」です。詳細は次回に回すとして、高気密というと「息苦しいのでは」と想像する人がいます。竣工後も高気密だと思い込んでいるからです。
そんな人に私は、「高気密とは、いったん針一本通さないほど高気密につくっておいて、自分が開けたい処に穴(給・排気口)を開ける行為。穴を開けるのだから高気密ではありません」と伝えます。
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