Column
空気と換気のコラム
南 雄三 先生
2.換気の目的と気密
2014/12/17
1日に30kg
実はこれ、私達が1日に呼吸する空気の重さなのです。「空気に重さがあるの?」といわれそうですが、空気にも重さがあって、1m3で約1kgくらい。1日30m3くらい呼吸するので、30kgくらいになるのです。
私達は1日に1kgの食事をとり、3kgの水分を採ります。これに比べて30kgの空気を吸うのですから、いかに空気の体に及ぼす影響が大きいかがわかります。健康を気遣って、食物に注意を払い、ミネラル豊富な水を飲もうとするのに、空気には無頓着でいませんか。人は1日の90%を室内で過ごすのですから、室内空気の質に関心をもたなければいけません。
空気の中には…
「空気がきれい」とはどんなことでしょう。
空気は78%の窒素と21%の酸素、そしてアルゴンや炭酸ガス(以下CO2)などの微量のガス約1%で成り立っています。換気の話でよく出てくるのはCO2ですが、空気に含まれる割合はたったの0.03%です。
空気にはこれらガスの他に、ニオイ、ホコリ (粉塵)、細菌、化学物質、そして水蒸気と熱も含まれています(図1)。生活していれば、こうしたニオイや汚染ガス、そして水蒸気が発生します。そこで。新鮮な外気を室内に取り込み、汚染ガスと水蒸気を希釈して(うすめて)、外に出すことが換気の働きになります(図2)。
図1
断熱したら気密に
昔から日本の家は夏向きにつくられていたので、気密性には無頓着。隙間風が出入りして、ひどい寒さの中で我慢の生活をしてきました。我慢は美徳ですが、ヒートショックで脳卒中を誘発したり、肺を冷やして低体温症に陥れば美徳といってはいられません。家の中を温める必要がありますが、大きなエネルギーが要求されます。そこで登場するのが断熱です。もちろん断熱しても隙間風が出入りしたままでは意味がありませんから、気密化が必要になります。断熱・気密は一体で考える必要があります。
内部結露は気密で防ぐ
隙間風は寒さを招くだけでなく、内部結露の原因にもなります。図3のように、壁の中に充填された断熱材の中に、床下から湿気が入り込むと結露が起こります。結露はどんどん拡大して土台を濡らし、腐朽菌が繁殖して土台を腐らせ、白蟻が来れば激しく食害されます。
北海道で断熱化がはじまった頃にこの現象が多発しました。産官学で原因の調査研究が行われて、出た結論は「上下の気流止めが必要」というものでした(図4)。「断熱したら気密にしなければならない」という原則を知らしめるために「高断熱・高気密」という言葉が生まれました。ところが、道外では高断熱・高気密の真意を理解することなく、「気密の目的は隙間風をなくして寒さを防ぐこと」だけを受け取りました。そこで、「北海道のように寒さは厳しくないのだから、断熱はある程度必要だけど、気密は要らないのでは」と、内部結露に無知な判断をする者が少なくありませんでした。
図3・図4
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