Column
空気と換気のコラム

井上 浩義 先生

6.PM2.5時事解説

2015/06/01

このコラムが掲載される夏頃には、PM2.5がニュースなどで取り上げられることは少なくなっているはずです。しかし、また冬になれば昨年や一昨年と同様に、PM2.5の問題は人口に膾炙することでしょう。

そうです。PM2.5の問題は今後何十年と続いていきます。

 

今、中国などではPM2.5よりも更に小さな粒子であるPM0.5(つまり、0.5マイクロメーター以下の粒子)を積極的に測って規制していこうという流れがあります。これは、PM2.5が当初PM10(10マイクロメーター以下の粒子)の測定から始まったことと同様に、測定技術の発展とともにその対象を小さくしていく技術的な欲求に基づくものです。

 

しかし、私たちに必要なことはまず現状のPM2.5問題を十分に知って、それに対する対処を考えることです。環境省は日本全国で大気汚染物質広域監視システムを作り、その結果を公表しています。このサイトを「そらまめ君」と言います。このサイトの中に全国約2000箇所の測定地点の結果が表示され、予測もしています。皆さんのお住まいの地域の測定値もあります。是非一度、訪問してみて下さい。

 


井上先生コラム6-1
「環境省大気汚染物質広域監視システム そらまめくん」別ウィンドウでリンクします。


 

さて、PM2.5問題の本質は国際的な協力の下に、PM2.5の規制と対策を行うことです。日本のPM2.5の半分が中国や韓国からやってくるのですからこんなことは誰でも当たり前に思うことですね。二酸化炭素排出による地球温暖化と同様にPM2.5も地球規模での対策が必要です。しかし、二酸化炭素排出に関する国際協力が難しいことは京都でも開催された気候変動枠組条約締約国会議の実効性が危ぶまれている現状からも容易に推察されます。

 


井上先生コラム6-2

 

PM2.5問題については日本政府も、国連環境計画(UNEP)やクリーン・エア・アジア(CAA)などと連携しながらPM2.5の実態把握と技術開発に尽力しています。また、日本のPM2.5の半分の発生源である中国や韓国とも共同声明を発表し、専門家協議や都市間連携を進めています。都市間連携って・・何故、地方自治体任せなの?と私は最初に思いましたが、日本政府は国と国との難しい関係よりも先ずはできることを早急に進めようということかもしれません。

 

全部で6回のコラムをこれで終わらせて頂きます。できるだけ分かり易く書いたつもりでしたが、私の力不足で難解な箇所があったかもしれません。ここにお詫び申し上げます。PM2.5についてはまだまだ書けなかったことがたくさんあります。私たちの研究室では現在、PM2.5の動物に対する影響だけでなく、植物に対する影響などの研究も進んでいます。PM2.5は一部の遺伝子や酵素にまで影響を与える可能性があります。これからもPM2.5の研究を続けていきます。

それでは、皆様のますますのご健勝を祈念し、筆を置かせて頂きます。ありがとうございました。

 


井上先生プロフィール

 

■井上浩義先生コラム一覧

1.大気汚染の歴史から現在の汚染状況

2.PM2.5による健康被害について

3.PM2.5の発生メカニズム、発生状況(今後も続くPM2.5)

4.地域で異なる発生源

5.PM2.5から身を守るために(マスクのような繊維状フィルタの効果は?)

6.PM2.5時事解説

 

※当コラムや画像等及びその内容に関する諸権利は、原則として株式会社トルネックスに帰属します。また、一部の画像・イラスト等の著作権は、原著作者が所有していますので、これらの無断使用、転載、二次利用を禁止いたします。

お問い合わせ

フォームが表示されるまでしばらくお待ち下さい。

恐れ入りますが、しばらくお待ちいただいてもフォームが表示されない場合は、こちらまでお問い合わせください。

トルネックスにお問い合わせ・資料請求・ご質問・ご相談は