Column
空気と換気のコラム
井上 浩義 先生
3.PM2.5の発生メカニズム、発生状況(今後も続くPM2.5)
2015/04/28
PM2.5はいろいろなところから発生します。PM2.5は中国の春節(旧正月)の花火規制の報道でも分かるように人間の活動から発生します。しかし、それだけでなく、土壌や火山灰などの自然からも発生します。
我が国においてPM2.5発生の原因として、良く知られた例としては中国からやってくる黄砂(土壌)です。日本で中国由来のPM2.5が問題として認識されたのは、2010年11月に長崎県の五島列島や対馬においてPM2.5の異常値が観測されたことが発表されて以来です。これらの島々には大きな工場はありませんし、ひどい交通渋滞もありません。そのために、原因が中国から偏西風に乗ってやってくる黄砂だと分かってにわかにPM2.5の問題が注目されるようになりました。従って、日本の中では、西側に位置する地域ほどPM2.5に関心が高く、東に行くに従って低くなります。私は九州の博多の出身ですが、帰省すると東京では春先にしか見られないテレビのPM2.5予報が天気予報と併せて年中流れています。
しかし、例えば、中国の黄砂発生地帯(タクラマカン砂漠、ゴビ砂漠、黄土地帯)の中心部から福岡市までの距離は約3200kmですが、同じ中心地から札幌市までは約3900kmで、距離としては22%程度しか遠くなっていません。つまり、中国から飛んでくるPM2.5は日本が雨季である時期を除くと飛散は日本全国に及ぶのです。実際に、黄砂の飛来は北海道を超えてオホーツク海に及ぶことが気象庁により報告されています。なお、2010年にアメリカ航空宇宙局(NASA)が発表したPM2.5の世界分布地図でも中国のPM2.5濃度が非常に高いことが分かります。
もちろん、近頃、日本の諸火山の活動が活発になっており、その噴火に伴うPM2.5も存在します。更には、昔に比べてきれいになったとはいえ、重油を始めとする化石燃料の燃焼に伴う排気ガスもPM2.5の原因です。幹線道路から10m離れるとPM2.5は7%減少すると言う研究論文もあるほど自動車由来のPM2.5も無視することはできません。
更には、高度な社会生活を送っている場所ばかりがPM2.5の汚染対象となるのではありません。例えば、南米・アマゾンやボルネオの奥地でもPM2.5は観察されています。これらの地域では焼畑農業が未だに行われており、この焼却灰がPM2.5となっています。このように多様な原因、そして多様な国々から発生するPM2.5ですから、短期間のうちに大幅に減少させることは難しく、今後もPM2.5問題は続くことが予想されています。
次回はPM2.5の発生が国や地域で異なり、その対策も多様にならざるを得ないことを書かせて頂きたいと思います。
■井上浩義先生コラム一覧
3.PM2.5の発生メカニズム、発生状況(今後も続くPM2.5)
5.PM2.5から身を守るために(マスクのような繊維状フィルタの効果は?)
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