Column
空気と換気のコラム

井上 浩義 先生

1.大気汚染の歴史から現在の汚染状況

2015/03/17

私たちが住む地球を取り巻く大気は、窒素が約78%、酸素が約21%、そしてその他の気体が1%含まれています。今、地球温暖化で問題になっている二酸化炭素は全体の約0.04%を占めるだけなのです。この僅かな量の二酸化炭素が更に少しだけ変化しただけでも、地球の平均気温が・・、生態系が・・と大問題になるのです。私たちがあって当然だと思っている大気がどれだけ大事か良く分かります。私たちは、この大気の中でしか生きていくことができません。私たちは空気を呼吸によって常に身体の中に取り込んでいます。成人ですと1回の呼吸で約500mL(ペットボトル1本分)の空気を吸い込み、1分間では12~14回呼吸をしますので、1分間に6~7リットルもの空気が身体の中に取り込んでいます。このため、私たちの健康にきれいな空気が必要なのです。

この空気の汚れを「大気汚染」と言います。若い人たちには近代史で習うくらいに古い出来事になってしまいましたが、私と同じように50歳以上の人たちは、子ども頃に四大公害病のひとつとして知られる四日市ぜんそくや川崎の光化学スモッグなどの報道が日々続いたことを覚えておられるかもしれません。1967年に公害対策基本法が、そして翌年に大気汚染防止法が制定され、NOX(窒素酸化物)やSOX(硫黄酸化物)などという言葉が広範に知られるようになったのもこの頃です。


井上先生コラム1-1

 

この頃から、大気汚染対策設備等が開発され、また、車の軽油やガソリンの基準も厳しくなりました。例えば、1953年に軽油の硫黄含有量基準は1.2%であったものが、1997年以降は24分の1である0.05%にまで下げられています。また、車の排出規制も年々高められました。そのため、現在ではNOX排出量は1970年代の半分以下まで減っています。


井上先生コラム1-2

昔の公害と呼ばれていた時代の大気汚染は「パイプエンド型」汚染といい、大気汚染の原因がひとつの企業やひとつのコンビナートでした。一方で、現在の大気汚染は、地球温暖化やここで取り上げるPM2.5問題のように発生源が多様で、発生や被害が地球規模になっています。そこで、1993年にはこれに対応できるように公害対策基本法は破棄され、環境基本法が制定されたのです。将に、現代そしてこれからの大気汚染問題PM2.5とは、直径が2.5マイクロメートル(1ミリメートルの400分の1)以下の粒子や粒滴を指します。粒滴も含みますので小さな埃のようなものだけでなく、小さな水滴もPM2.5に含まれ、PM2.5とは空気中にある非常に小さなものの総称と考えればよいのです。PM2.5問題は、最初は自動車排気ガスの指標として定義されました。しかし、その後に、地球の砂漠化に伴う土壌粒子の飛散、森林破壊による焼却灰発生など地球規模の問題としてとらえられるようになっています。

2.5マイクロメートルというと、ヒトの細胞の大きさが10マイクロメートルですからヒトの細胞より小さいのです。次回はこの小さいが故に問題となる“健康被害”について書かせて頂きます。

 
 


井上先生プロフィール

 

■井上浩義先生コラム一覧

1.大気汚染の歴史から現在の汚染状況

2.PM2.5による健康被害について

3.PM2.5の発生メカニズム、発生状況(今後も続くPM2.5)

4.地域で異なる発生源

5.PM2.5から身を守るために(マスクのような繊維状フィルタの効果は?)

6.PM2.5時事解説

 
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