Column
空気と換気のコラム
南 雄三 先生
5.必要な換気量
2015/02/10
本シリーズ3の「換気の原則」の稿で、必要な換気量の目安は0.5回/時と書きました。では、なぜ0.5回/時なのでしょうか。
0.5回/時の理由
必要な量の前に、まずは「きれいな空気」の定義づけが必要ですね。実は空気中に含まれる炭酸ガス(CO2)濃度が指標になっているのです。
人は酸素を吸ってCO2を吐き出すので、人が居ればCO2濃度は高まり、同時に人体から埃(粉塵)やニオイが出てきます。そこで、CO2濃度を取り上げて空気の清浄度を評価することになりました。
まず、室内の空気中のCO2濃度が1000ppm以下ならば空気は清浄だと考えることにしました。外気のCO2濃度は350ppm程度(今では400ppmに近づいているという報告がありますが)ですから、室内のCO2濃度を1000ppm以下に抑えるために必要な換気量は、起居時では一人当たり30m³/時以上、就寝時は20m³/時以上となります。計算根拠は表1のとおりです。
表1 必要な換気量の計算
0.5回/時
1人当たり30m³/時以上ということは、4人家族なら120m³/時以上になりますが、換気計画では換気回数0.5回/時で全体の換気量を設定します。先に述べたように40坪の家だと158m³※ですから、4人家族だと3割ほど余分な換気量となります。 二人で住めば更に余分になり、出掛ければ換気行為は無駄ということもできます。それでも家具や生活用品から出る化学物質やニオイを除去するために、換気は常時行うことが原則とされているのです。
※40坪×3.3㎡/坪×2.4m(天井高さ)×0.5回/時=158.4m³
局所換気は0.5回では不足
その一方で、部屋単位での換気量は空間が小さいので、0.5回/時では足りなくなります。なので、ニオイや温度、湿り具合などで換気不足を察知し、窓を開けたりドアや襖を開放して空間を大きくするなどの措置が必要になります。
同じように、トイレで用を足した時のニオイは0.5回/時ではすぐに消すことはできません。家全体を換気するのと、局所的に換気するのとでは意味が違うのです。常に家全体を換気することが原則で、その上でトイレや浴室のようにニオイや水蒸気が出る場所では、必要な時に換気量を増やすことが理想的です。
化学物質に対して
以上、人が生活すればCO2濃度が高まることから、空気の清浄度をCO2濃度で評価してきました。でもこれでは化学物質の影響は評価できません。そこでシックハウス法では、①対象物質をホルムアルデヒドに絞り、②放散速度と換気量を組み合わせた基準をつくりました(表2)。ホルムアルデヒドを放散する建材は、放散速度によってF☆からF☆☆☆☆までランクづけられ、F☆☆☆☆の場合は換気回数を0.5以上にすれば、無制限に使えることとしました。
シックハウス法が告示された後では、一般的に用いられる建材のほとんどがF☆☆☆☆または規格外(放散しない)の安全な建材になりました。なので、住宅の換気回数はシックハウス対策としても0.5回/時ということになりました。
表2 シックハウス法の建材の放散速度規格と換気量の関係
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