Column
空気と換気のコラム
鍵 直樹 先生(ウィズコロナ時代に備えるための室内空気環境とは)
5.空気清浄機のフィルタの有効性について その①
2022/04/08
飛沫核の除去に有効なフィルタ
ここまでは換気により室内空気中の浮遊しているウイルス粒子を希釈して,感染するリスクを下げる対策を述べた。また,室内汚染物質の除去には,空気清浄機が有効であることを述べた。新型コロナウイルスの本体の粒径は,60 nmから140 nm程度で,室内空気中で存在しているときには,咳やくしゃみにより飛沫のミストが飛散することになる。また,そのミストの中にこのウイルスが存在し,実際に感染者から発生した飛沫および飛沫核は,空間中に粒径1-4 µmの範囲で検出されている1)。よって,新型コロナウイルスも,換気だけではなく,粒子を捕集できる空気清浄機でも対策は可能である。
空気中の浮遊粉じんの除去については,空調機及び空気清浄機にエアフィルタがよく利用される。エアフィルタの捕集原理は,慣性力,さえぎり,拡散,重力,静電気力である。比較的粗大な粒子は,慣性力,さえぎり,重力により捕集され,微小粒子は,拡散,静電気力により捕集が行われる。よってこれらの効果が最小限になる粒径が0.2 µm程度にあり,これよりも大きな粒子,小さな粒子の捕集効率は良い。クリーンルームには,この最も捕集効率の最も悪い粒径であっても,99.97%の捕集効率を有するフィルタにHEPAフィルタが用いられている。しかし,このフィルタは圧力損失が大きく,フィルタに空気を通過させるためには多くのエネルギーを必要とし,強力なファンが必要となる。よって,オフィスビルなどで用いられる空調機には,中性能フィルタが用いられる。実際に飛沫核の粒径については除去できないと考えられがちであるが,近年エアフィルタの粒径別の個数濃度による評価の規格もあり,JIS B 9908:2011においては粒径2.5 µm程度の粒子で70%程度と,比較的良い捕集率を有している。よって,上述のような飛沫核に対応するような粒径の粒子の除去については,比較的得意である。一方家庭用の空気清浄機においては,HEPAフィルタが用いられることがある。しかしながら,これはフィルタ繊維を予め帯電させて,静電気力によりフィルタの圧力損失は少なくても,高効率に微小粒子を捕集できるようにしたものである。しかしながら,オイルミストなどを捕集するとフィルタ繊維上の帯電が消失し,捕集効率が落ちることが言われている。
このような欠点を補うために,静電気力の効果を期待し,空気の粉じんを荷電し,空気と分離するものに電気集じんがある 2)。粒子が帯電することで,電荷に作用する静電気力を受けることとなり,集じん部に捕集するものである。集じん部はエアフィルタとは異なり,平行平板の間を空気が通過することで,荷電した粒子は平板に捕集されるが,空気は平板に沿って通過するため,圧力損失が少ない。また,その捕集機構から微小粒子の捕集を得意とし,経時的な捕集性能の劣化が少なく,安定して捕集することが可能である。さらに,大風量にも適しており,オフィスなどの建築物の空調機に採用されることが多い。なお,捕集部の洗浄により捕集効率を比較的簡単に維持することが可能である。また,圧力損失が少ないため,送風エネルギーの低減,送風騒音の低下につながる。しかし,荷電部においては,放電を行っているためオゾンの発生が問題となる場合がある。高濃度のオゾンの吸引は,呼吸器等への悪影響が懸念される。電気集じん機からの出口のオゾン濃度がある一定濃度を超えないように配慮している清浄機,放電を制御することや別の荷電方法を用いるような清浄機も開発されている。
電子式集塵フィルタの集塵イメージ | 一般的なエアフィルタの集塵イメージ |
文献
1)鍵直樹:新型コロナウイルスの感染経路と空気中での粒径特性,空気清浄, 58-3, 130-133,2020.9
2)永吉健太郎:家庭用空気清浄機の微粒子除去技術および電気集じんの概要と研究動向,室内環境,23,2,151-160,2020
(つづく)
東京工業大学 環境・社会理工学院 建築学系 教授 博士(工学)
室内における空気環境について、汚染物質の発生から、室内での挙動把握・予測、及び対策について研究。前職の厚生労働省の研究機関である国立保健医療科学院では、建築物や医療施設等現場での検証にも携わる。日本建築学会、空気調和・衛生工学会、日本空気清浄協会、日本エアロゾル学会等多数の学協会に所属。一般社団法人日本建築学会において、2021年度日本建築学会賞(論文)を受賞。
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